不法滞在と国際結婚

「補完的保護対象者(=準難民)」「難民」認定申請と国際結婚について

注!
2023年3月15日現在、出入国管理及び難民認定法改正案が国会に提出されました。今後法案が国会で可決されれば、以下のように運用が変更される予定です。なお、法案が可決されない場合や、今後加筆や訂正をする場合があることをご承知の上で、読んでいただきたいと思います。

「補完的保護対象者(=準難民)」「難民」認定申請と国際結婚について

「難民」とは何か?

日本において、「難民」の定義は、実は日本の法律ではなくて、「難民の地位に関する条約」と、「難民の地位に関する議定書」によって、決められています。

難民の地位に関する条約 第一条A(2)
(前略)人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者またはそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを 望まない者。

うーん、かなり難しくて、読むのが嫌になる条文ですね。端的に言うと、ですね。

難民とは1

 

 

 

 

を理由に迫害を受ける恐れにより国外にいる外国人が、

難民とは2

 

 

 

 

 

者を、「難民」と言います。

つまり「難民」と認定をされるためには、①~⑤までのいずれかに限定された理由があり、かつ⑥~⑨までの状況になっていることが必要です。

今、日本にいるウクライナ人などは、①~⑤までの理由により日本に滞在しているわけではありません。ウクライナ戦争から逃れてきた、戦争避難民ですね。これは、厳密に言うと、「難民」ではないです。

そのために、新しく制度が作られます。それが、「補完的保護対象者」認定です。

 

「補完的保護対象者(=準難民)」認定制度の新設について

※現在まだ、法案の審議中です。

①~⑤までの理由ではないけれど、実際には国籍国の保護を受けることができない、恐怖のために国籍国の保護を望まない人に対して、新しく「補完的保護対象者(=準難民)」として認定する制度が、(法案が可決されれば)新設されます。

今のウクライナに帰れと言われても、恐怖のために帰れない。
今のミャンマーに帰れと言われても、恐怖のためにミャンマー政府の保護を望まない。
このような外国人に対し、日本が国籍国に欠けている部分を補完する形で、保護しましょうということですね。

 

※現在、ウクライナ避難民やミャンマー国籍の人は、「特定活動(緊急避難措置)1年」の在留資格が与えられています。働くこともできます。

難民ビザから結婚ビザ

難民申請の状況について

自分が難民だということを、出入国在留管理局に申し立てると、審査が終わるまでは日本に在留することが可能です。審査中の在留資格は「特定活動(難民申請中)」です。

ビザを持っている人からの難民申請者は、必ずパスポートに難民申請の申請受付票と、特定活動の「指定書」をホッチキスで留めてありますで、そこで現在難民認定申請中かどうか確認できます。

2018年1月15日以前は、申請から6カ月目以降で難民認定申請及び審査請求が終わるまでの期間(数年間が多い)に就労が可能になるために、虚偽の難民申請を行う以下のような人も多々見受けられました。

  • 短期滞在の期限内に帰りたくない訪日外国人観光客
  • 学校から逃げ出した留学生
  • 実習先から失踪した技能実習生
  • 仕事が見つからなかったり、就労ビザへの変更が失敗したりした卒業生
  • 在留資格の変更や在留期間更新が不許可で、出国準備ビザをもらった人

とにかく、何としても日本に残りたい人にとって、出来る手段の一つが難民申請でした。そのために色々な事情を持つ人が、こぞって難民申請を行っていたことは事実です。

 

難民認定申請、審査請求の運用の厳格化について ①現行

2018年1月15日に運用が変更され、現在は非常に厳しい対応になりました。

  1. 審査の初期の段階で、偽装申請が見込まれるものを見分けて、早期に結果を出す。
    (逃げた留学生や、逃げた技能実習生、不許可からの難民申請など)
  2. 2カ月→3カ月→3カ月に在留期間を細かく分けて、申請から8か月間は在留カードがない。(就労の許可もこの間はありません)
  3. 複数回申請を極力できないようにし、審査が完了したら帰国を強く促す。
    (複数回申請時に不許可になると、その日から在留資格がなくなり、不法残留になることがあります)⇒今後変更されることが予想されます。

 

難民認定申請、審査請求の運用の厳格化について ②今後

現在は、複数回の難民申請でも、(在留資格はなくなりますが)申請することは可能です。そして、審査中は、本国の送還が出来なくなるために、5回以上の難民認定申請や審査請求を行い、すでに10年以上難民申請継続中(驚!)という、強者もいたりします。
もちろん、本人にとっては、それだけ日本に残りたい別の理由があるのですが・・・。

難民認定申請をできるのは、2回まで
今後、入管法が改正されれば、以下のように運用が変更されます。
① 一度目の難民認定申請 ⇒不認定
② 同難民認定申請の審査請求 ⇒審査棄却/又は、審査請求を行わない
③ 二度目の難民認定申請 ⇒不認定
④ 同難民認定申請の審査請求 ⇒審査棄却/又は、審査請求を行わない

この後、三度目の難民認定申請を行うことができなくなりました。そのため、本国への強制送還を止められないです。本国に帰らなければなりません。

犯罪者(無期~3年以上の懲役刑が決定している者)、又は、国際テロリスト、重大な入管法違反者は、難民申請できない。

なお、執行猶予を受けているものを除きます。
犯罪者が本国に帰りたくないと、難民認定申請をするのは、いかがなものかと・・・。

 

難民申請者との結婚と、在留資格について

彼が現在難民認定申請者の場合、彼との結婚を成立させてからどのような申請をするかは、今現在ビザがきちんとあるかどうか(不法滞在者でないか)によります。

(1) 今現在、「特定活動(難民申請中)」のビザがある場合
⇒ビザがあれば、基本的には通常の変更申請が可能です。難民認定をした理由や審査状況を、精査して検討します。

(2) 今現在、「特定活動(難民申請中)」のビザがなく、不法滞在となっている場合
通常の変更申請が出来ませんので、「退去強制令書」が発布されているかどうかにより判断します。(仮放免許可書を見ると、判断できます)

⇒退去強制令書発布前ならば、「在留特別許可」を申請します。
在留特別許可を行う

⇒退去強制令書発布後ならば、「再審情願」又は「行政事件訴訟」を行う
退去強制令書と再審情願、行政事件訴訟について

 

「難民」や「補完的保護対象者」として認定されると、どうなるのですか?

 

「難民」や「補完的保護対象者」として認定される

「定住者」の在留資格を与えられます。
また、難民旅行証明書が交付されることがあり、海外に出国することも可能になります。
「難民」は、その国籍国の庇護を受けることができない、のが前提でしたよね。それで、ずっと本国のパスポートが発行できないので、その代わりの証明書として使います。

また今後、ウクライナから避難してきた人などが「補完的保護対象者」の認定を受けることは増えてくると思います。

 

まとめ

私も、数件だけですが「真の」難民認定申請者を取り扱ったことがあります。
本当の難民は、壮絶な経験を経て、難民認定されていますね。それは、聞いていても苦しくなるくらいの、重く辛い経験でした

今後の改正法が可決されるかどうかによりますが、真に庇護が必要な人を確実に守る制度になるとともに、虚偽の難民申請者を出さない制度になることを強く望みます。

 

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