(現行法)退去強制令書と再審情願、行政事件訴訟について
(改正後)退去強制令書と上陸拒否期間短縮許可申請、退去命令について
退去強制令書が出ているか、確認する
不法滞在の外国人と聞いた時には、退去強制令書が発布されているかどうかが、一つの分かれ目でしたね。これは、以下の方法のどちらかで確認できます。
☑ 通知書を持っている。
本人に対し「入管法第24条の〇号に該当している、かつ、在留特別許可に該当しない」との書かれた通知書を持っている。
☑ 仮放免許可書の番号に、「退」の文字がある。
仮放免許可書に、東退第0000号と書かれているもの
退去強制令書がまだ出ていない場合は、在留特別許可を行うことが出来ます。すでに出てしまった場合は、在留特別許可さえ提出することが出来ません。
(現行法)退去強制令書が出た後で、取りうる手段はあるか?
自費出国をして、本国に帰る
彼がお金をもっていたら、自分で飛行機代を払って帰ります。
もし、お金がない時は、本国の家族などから日本にいるあなたや友人に送金してもらって、入管に現金を差し入れします。入管内で彼がチケットを手配できます。
強制送還されて、本国に帰る
収容中に、いきなり早朝に起こされ、入管職員に「今日帰るぞ」と言われ、そのまま空港に連れていかれ、飛行機に乗せられ、・・・うんぬんです。この時の飛行機代は、国の負担となります。
もし、もう一度日本に来たいのならば、この形で本国に帰るのは絶対にやめた方がいいです。次の在留資格認定証明書交付申請や、上陸審査の時に、非常に厳しく判断され、入国できなくなる可能性が高くなるからです。
それでも、どうしても嫌だと粘ると、最終的にはこうなります。
再審情願を提出する
退去強制令書の発布後にあなたと婚姻したなど、大きな身分上の事情変更があった場合に、もう一度入管に対し審査してほしいと願い出るものを、再審情願といいます。
請願権(=国などに対して、その職務に関する事項についての希望・苦情・要請を申し立てる権利)に基づくものですが、望んだ結果を出すのは非常に困難です。
しかしながら、これしか方法がない案件もあって、ですね。提出することはあります。
裁判による退去強制令書発布処分取消請求訴訟を行う
退去強制令書発布後、6カ月以内ならば、裁判が可能です。また、入管からも裁判できる旨を教示されます。
もし、入管の指摘する違反事実が、本当のことと全く違うならば、訴訟をして「彼は本当に不法滞在者なのか?」を争うべきです。入管が間違った判断に基づき退去強制令書を発布したならば、それを取り消すように求める価値はあると思っています。
そして、裁判で勝訴すれば、退去強制令書が取り消されることになります。また、他の在留資格を得たい場合は、義務付け訴訟をします。
しかし・・・。
ほとんどの場合において、不法滞在している事実そのものは、覆すことができないと思っています。そして、不法滞在が違法行為であることを分かっていてもなお、「妻子がいる」「どうしても家族と一緒にいたい」という理由から、日本の在留を認めてほしいはずです。
それは、裁判では解決できない問題です。
(改正後)退去強制令書と上陸拒否期間短縮許可申請、退去命令について
あなたと付き合う前から、既に退去強制令書がでていた。
日本にあなたや子どもがいて、頑張って在留特別許可の申請をしたけれども、不許可になった。
彼の過去の入国経緯や在留歴が悪すぎて、どうしても許可できないと言われてしまった。
そのような場合で、今後できる方法について説明します。
上陸拒否期間短縮許可申請について(新設)
退去強制令書が発布された後に、「上陸拒否期間を1年とする申請(上陸拒否期間短縮許可申請)」をすることができます。
退去強制令書後に帰国すると、日本に来ることができない期間(=上陸拒否期間)が5年/10年/永久にあります。
その期間を5年から、1年に短縮してください!と申請し、以下の①~⑤が認められたら、1年後には申請して、もう一度日本に来ることができます。
- 速やかに出国する
- 帰国のチケット代は、自分で払う
- 本人の素行が悪くない
- 退去強制事由の理由にもよる
- 初回である
1年後に日本に入国できるのならば、一旦本国に帰ってもいいと思っている人はいると思います。帰ったら親兄弟に会いたいし、あなたにも本国を見せたい・・・。
このような場合に使える“最後の奥の手”になると思っています。
うん、今までになかった申請ですので、非常に画期的、ですね!
その他の手段について
☑ 上陸拒否期間の短縮申請が認められなかった。
☑ 上陸拒否期間が5年又は永久であることが確定した。
そのような場合にどうしても帰国したくなければ、再審情願や、行政事件訴訟を検討することになります。法改正後にも、出来ないわけではないです。
(退去強制令書後の)監理措置について(新設)
退去強制令書発布と同時に(退去強制令書前の)監理措置は終わります。そして、新たに監理措置にするかどうかを、改めて判断します。
速やかに本国に帰国できない場合で、監理措置が認められれば収容を解くことができます。しかしながら、この際の監理措置は、必ず就労不可(仕事はできない)です。
そして、本人はいつ入管に収容されて強制送還されるかを怯えながら、本人が何回も入管に出頭し続けることになります。
また、監理人は、本人が入管に呼び出されたら、本国に帰りたくないと泣いて嫌がる本人を、必ず連れて行かなければなりません。
監理人の義務ですが、非常に心労の多い、厳しい立場に立たされそうです。なんだか、逆恨みされそうで、嫌ですね・・・。
退去命令について(新設)
本国への帰国に向けて、全ての条件が整っていて、それでもなお本国に帰りたくないとごねると、入管は期限をきめて「退去命令」を発布することができます。そして、この退去命令を受けた者が、期限内に退去しない場合は、刑事罰(1年以下の懲役もしくは20万円以下の罰金またはその併科)が科せられます。
入管の収容施設から、(刑が決まれば)刑務所に行くことになってしまいます。
まとめ
入管法改正後は、在留特別許可の結果が(実質的に)5つに分かれます。
① 在留特別許可の許可 ⇒日本にこのまま滞在できる
退去強制令書前に在留特別許可の申請を行い、在留を許可された。
非常に嬉しいケースですね💖
② 在留特別許可が不許可 、又は退去強制令書発布済 ⇒短縮申請が許可
⇒上陸拒否期間 1年
在留特別許可は不許可になったけれど、上陸拒否期間の短縮(1年)が許可された。
または、既に退去強制令書発布済で在留特別許可は申請出来なかったけれど、上陸拒否期間の短縮(1年)が許可された。
1年後に再来日できます ❣ ので、今後、1年間の交流実績を積み重ねて、認定申請をしましょう。
③ 在留特別許可が不許可 、又は退去強制令書発布済 ⇒短縮申請が不許可
⇒上陸拒否期間 5年
在留特別許可が不許可等になり、その後、上陸拒否期間の短縮許可申請も不許可。
この場合は、従来通り上陸拒否期間が5年となります。
5年後に申請するか、帰国後に実績を積み重ねた上で、もう少し前から上陸特別許可申請をします。
④ 在留特別許可が不許可、又は退去強制令書発布済⇒短縮申請が不許可
⇒上陸拒否 10年 (2回目以降)
不法滞在が初犯ではない(2回目以降)場合、上陸拒否期間は10年です。
上陸特別許可申請を行うと、もう少し早く来れるかもしれません。
⑤ 在留特別許可が不許可、又は退去強制令書発布済⇒短縮申請が不許可
又は、在留特別許可が申請できない
⇒上陸拒否期間 永久(犯罪、薬物、重大な入管法違反等)
懲役1年を超える犯罪や薬物犯罪によって退去強制令書が出た場合、永久に上陸できません。今後も許可はかなり難しいですが・・・。
もちろん、この他に再審情願や行政事件訴訟等の残された手段はあります。しかし、どれも非常に厳しい結果が予想されます。入管法に定められたルールを逸脱してまで、彼が日本に在留し続けなければならない人道上の理由があると認められることは、非常に稀だからです。
そして、今後はよりいっそう、日本に居続けることで状況が悪くなるような制度になりました。退去命令制度により、最後には、本国に帰らないこと自体が罪となり、罰金や懲役刑となってしまいます。
そうですね・・・。
では、どうすればいいですか?
「まずは、在留特別許可申請や、上陸拒否期間の短縮許可申請を行い、とにかく彼が日本にいるうちにできることをやってみる。それでも無理ならば、不法滞在であることを認めて帰国し、1年後以降に認定証明書交付申請をして再来日する。」と、強く勧めるようになると思います。
不法滞在者が本国に帰るまでに何をすればいいか、本国に帰ってからどうすればいいかが、きちんと制度化されたので、今の暗闇にいるような苦しみよりは、はるかに希望があるはずです。
そして、未来に希望があるならば、二人が離れ離れでも頑張れることってあると思うから、いずれ「日本人の配偶者等」の在留資格で堂々と来ることが、一番いいのではないかな?
なお、帰国後の再申請については、出国命令等で帰国後の申請と、上陸特別許可について(作成中) をご覧ください。
なお、難民認定申請者については、以下もご覧ください。
難民と、補完的保護対象者(=準難民)認定申請と、国際結婚について はこちら