不法滞在と国際結婚

監理措置の決定と、監理人の選任について(改正後)/収容と仮放免許可申請について(現行法)

注!
2023年6月8日、国会にて出入国管理及び難民認定法の改正が決まりました。しかしながら現時点では、まだ新しい制度の運用は行われていません。2024年6月頃に、新しい制度「監理措置」が始まる予定です。

監理措置の決定と、監理人の選任について (改正後)
収容と仮放免許可申請について (現行法)

 

(現行法による) 収容とは何か?

まずは、現行法を説明します。

不法滞在の外国人を見つけたら、本来は全員を入管内に収容しなければなりません。これを、全件収容主義といいます。

 

収容令書による収容(60日以内)

不法滞在の外国人を見つけて、(又は警察から送致されて)入管の施設で、「この外国人は本当に不法滞在かどうか」調査している間の収容です。入管は30日又は60日以内に調査結果を出さなければなりません。

☑ この外国人は、不法滞在ではない →直ちに釈放されます
☑ この外国人は、不法滞在者である →日本から出ていくよう伝えられます
(退去強制令書が、発布されます)

 

退去強制令書による収容(本人が本国に帰国するまで)

彼は確実に不法滞在者であり、日本から退去しなければならないと判断した後で、退去強制令書が発布されます。もう、日本にいること自体が違法行為だからです。その後は、速やかに本国に帰らなければなりません。

しかし、どうしても帰りたくないと主張し、日本に残る人もいます。そして、この間の収容は、外国人が帰国するまで無期限に続きます。外国人の長期収容が問題視されていますが、そもそも、制度としてそうなっているためです。良いことだとは思いませんが・・・。

 

仮放免許可申請について

収容令書による収容にせよ、退去強制令書による収容にせよ、入管の収容施設に収容されていることは、本人や家族にとってあまりに厳しい状況です。
そのため、本人や家族などが、「彼を、入管の収容施設ではなく、外に出してください」とお願いする手続きが、仮放免許可申請です。

 

仮放免の条件について

仮放免許可申請には、身元保証人が必要です。また、本人に対し次の3つの条件を課されることがほとんどです。

  1. 保証金の納付(300万円以内で、個々の収入により判断)
  2. 住んでいる場所と、行動範囲の制限
  3. 入管に呼び出されたら行かなければならない

日本人と婚姻し、一緒に入管に行って自ら不法滞在者であると伝えた場合、その日のうちに仮放免が許可されることが多いです。そうなれば、普通に家に帰ることができます。(絶対ではありません。逃亡歴等があると、収容されることがあります)

 

仮放免後の出頭義務について

仮放免には、必ず期間が決まっていて、入管に指定された日に行く義務があります。
必ず行ってください。もし、万が一急病などで行けない場合は、必ず入管に電話連絡を入れ、別の日を決めてもらってください。

連絡なくずっと行かないと、入管は失踪したと判断します。その後、仮放免許可が取り消されると同時に、本当に収容されてしまいます。(保証金も没収されます)

 

(改正後) 監理措置の決定と、監理人の選任について

(退去強制令書前)

収容か、監理措置にするかを、まずは入管が決定する

入管は不法滞在が疑われる人に、収容して調べるか、収容施設の外で生活をさせながら調べるか、どちらかを決めます。生まれたばかりの赤ちゃんや重篤な状態の病人など、収容にふさわしくない人がいるからです。
(現行法では、全員を入管内に収容しなければなりませんでした)

 

申請して監理措置が決定すれば、収容されない

入管が違反調査をしている間に、「彼を収容しないで、監理措置にしてください」と申請できます。入管が認めれば、収容されません。あなたと一緒に暮らすことができます。

監査措置の決定と、監査人の選任について

監理措置の条件について

監理措置を決定するために、下の1~5の条件を必ず守らなければなりません。

  1. 住む場所と、行動範囲が決まっています (埼玉県内と、入管への経路など)
  2. 「入管に来てください」と言われたら、必ず行かなければなりません
  3. 保釈金を払います(逃げないように・・・。あとで返してもらえます)
  4. 定期的に、監理人や入管に報告をします
  5. 「監理措置決定書」をいつも持っていなければなりません。また、必要な場合は見せなければなりません。

この監理措置は、違反調査が始まってから終わるまでの期間です。また、「監理措置決定通知書」があれば、警察などに不法滞在で逮捕されることはありません。
なお、許可なく就労や会社の経営を行っている場合や、定期の届出をしなかった場合は、刑事罰が科されます。気を付けましょう。

 

報酬を受ける活動の許可(新設)

生計を維持するために必要であって、本人が申請し許可されれば、入管が認めた会社で働くことができます。

☑ 就労する会社との雇用契約
☑ 本人や家族の収入状況
☑ 第三者からの援助の可能性

これらを考えて、就労の許可を出すかどうかを入管が判断します。

これは、非常に画期的な制度ですね。仮放免中の彼に収入がなく、非常に苦しい生活を強いられている方がいるので、朗報だと思ってます。

 

監理人の選定について

監理措置を決定するためには、必ず監理人が必要です。つまり、監理人がいなければ、監理措置もなくなります。(※1) そして、監理人は、以下の1から4について責任があります。

  1. 本人の生活状況を把握し、指導や監督をする
  2. 出頭日に必ず出頭させる。また、その他の条件を守らせる
  3. 住むところを確保し、必要な情報等を与える
  4. 本人が監理措置に違反した時や、許可なく不法就労を行っていることを知った時は、必ず入管に届出をしなければならない
  5. 監理人が死亡した時は、必ず届出を行う

監理人は、本人がどこにいて、何をしているか、きちんと把握し続けることが必要です。
また、監理人が4の届出等を行っていない場合や、虚偽の届出を行った場合は、10万円の過料が課されます。うーん、責任として、決して軽くはないですね。

※1 監理人を辞任する際には、あらかじめ主任審査官に届出することが必要です。そして、監理人が辞任し、別の監理人が用意できなかった場合は、監理措置が取り消されます。

 

監理措置の取り消しについて

監理措置の条件を守らない場合や、以下の場合には、監理措置を取り消されます。

☑ 逃亡した、又は逃亡するかもしれない
☑ 証拠隠滅した、又は証拠隠滅するかもしれない
☑ 監理措置条件の違反した(出頭しない、住居地に住んでいない等)
☑ 不法就労等
☑ 定期的な届出等をしなかった、又は虚偽の届出をした
☑ 監理人が辞任し、別の監理人が用意できなかった

監理措置が取り消されると、収容令書が発布され、収容されてしまいます。
この場合は、保証金も没収されます。

まあ、不法滞在かどうかの調査中なのでね。逃亡したり証拠隠滅したりしたら、非常に困ります。

 

監理措置の失効について

この監理措置は、違反調査期間中だけのものです。そして、違反調査が終わり、退去強制令書を発布した時に、(退去強制令書前の)監理措置は終わります。

なお、退去強制令書後も、別の監理措置があります。しかし、ここで書いた内容と条件が違います。別の監理措置については退去強制令書後の措置について で説明します。

 

(改正後) 仮放免と監理措置との関係について

監理措置が新設された後でも、従来からある仮放免がなくなったわけではありません。ただし、仮放免を使えるのは、以前よりもはるかに限定されます。

☑ 健康上に問題がある(病気や入院など)
☑ 人道上で問題がある
☑ その他これらに準ずる理由(出産や乳児の養育など)

これらに当たらない場合は、全て監理措置によることになります。

 

(改正後) 違反調査中の出国命令について(新設)

改正後の大きな変更点ですが、入管又は警察により捕まり、違反調査が始まった後でも、出国命令制度が使えます。(今までは、自主出頭だけでした)

  1. 初回の違反調査の結果がでる (できるだけ早く!)
  2. 速やかに本国に帰ります!と、入管職員に伝えます。
  3. 帰りのチケット代は、自分で払います。
    (収容中ならば、友人等にお金を差し入れてもらいましょう)
  4. 初犯である (2回目ではない)
  5. 不法入国や不法上陸ではない
  6. 不法残留以外の犯罪歴はない

在留特別許可が取れる見込みがかなり薄い場合や、他のビザで来日したい場合は、この制度を使って帰国することをまず初めに検討します。

出国命令制度では、上陸拒否期間を1年とすることができます。一年後に申請をして、ビザが取れれば、来日することができます。(但し、短期滞在ビザでの来日を除く)

 

また、一年後の在留資格認定証明書交付申請につきましては 上陸特別許可と、本国に帰国後の認定申請について(作成中) をご覧ください。

 

まとめ

東京入管の7階に行き、狭い小部屋が並ぶ一室で、鉄枠に囲まれた透明な強化プラスチック越しに本人に会うのは、行政書士でもやはり胸に来るものがあります。
それが、あなたの彼や、夫などの大切な人ならばなおさらです。
なんとか早く出してあげたいと願うその気持ちは、理解できます。

また、法改正後に、彼が収容されなくてもいいように監理措置が決定し、そしてその期間中に、彼が就労できれば、本当にラッキーです。

ただし・・・・

これだけでは、いずれ「日本から出ていきなさい!」という命令(=退去強制令書)が出るのを阻止できません。監理措置も仮放免も、今の時点で収容されない又は収容を解くだけだからです。

彼が正規に日本に在留するためには、どうしても在留特別許可を行うことが必要です。

在留特別許可を行う は、こちら

 

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