注!
2023年3月15日現在、出入国管理及び難民認定法改正案が国会に提出されました。今後国会で法案が可決されれば、運用が変更される予定です。なお、法案が可決されない場合や、今後加筆修正する場合があることをご承知の上で、読んでいただきたいと思います。
監査措置の決定と、監査人の選任について (改正案)
収容と仮放免許可申請について (現行法)
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収容と仮放免許可申請について (現行法)
(現行法による) 収容とは何か?
まずは、現行法を説明します。
不法滞在の外国人を見つけたら、本来は全員を入管内に収容しなければなりません。これを、全件収容主義といいます。
収容には、収容令書による収容(違反調査から、退去強制令書前)と、退去強制令書による収容の2つに分かれます。
収容令書による収容
不法滞在の外国人がいて、(又は警察から送致されて)入管に収容され、違反調査を受けている間の収容です。30日又は60日以内に調査結果を出し、退去強制令書による収容に切り替えなければなりません。
退去強制令書による収容
退去強制令書による収容は、帰国までの無期限です。外国人の長期収容が問題視されていますが、そもそも、制度としてそうなっているためです。良いことだとは思いませんが・・・。
仮放免許可申請について
収容令書による収容にせよ、退去強制令書による収容にせよ、入管の収容施設に収容されていることは、本人にとってあまりに厳しい状況です。
そのため、代理人や家族などが、仮放免許可申請を行って、許可になれば出ることができます。
仮放免許可申請では、本人に対し次の3つの条件を課されることがほとんどです。
- 保証金の納付(300万円以内で、個々の収入により判断)
- 住居及び行動範囲の制限(住んでいる都道府県内又は、入管との経路)
- 出頭義務
本人や代理人、家族からの申請による仮放免と、入管による職権での仮放免があります。日本人と婚姻し、夫婦で出頭した場合は、即日で仮放免されることもあります。
仮放免後の出頭義務について
仮放免には、必ず出頭義務があります。
必ず、その日に入管に行ってください。もし、万が一急病などで行けない場合は、必ず入管に電話連絡を入れ、出頭日をずらしてもらってください。
出頭せずに時間が経ち、入管が失踪したと判断すると、仮放免許可が取り消されると同時に、本当に収容されてしまいます。(保証金も没収されます)
(改正案による) 監査措置の決定と、監査人の選任について(新設)
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収容か、それに代わる監査措置を決定する
不法滞在の外国人を見つけたら、入管は違反調査の期間中、入管施設に収容して調べるか、監査措置をする旨を決定するか、どちらかを決めます。
(現行法では、全員を入管内に収容しなければなりませんでした)
また、監査措置で必要性が認められれば、違反調査期間中にも関わらず、雇用されて働くこともできます。
監査措置の決定は、どのように行われますか?
監査措置が認められる要件は、以下の通りです。
- 逃亡のおそれがない、あるいは著しく低い
- 証拠隠滅のおそれがない、あるいは著しく低い
- 収容により、不利益を受けることが著しい
- その他の事情がある
本人からの請求や、入管の判断で監査措置を決定します。この場合は、収容令書が発布されないので、収容されることはありません。
監査措置の条件と、監理人の選任ついて
監査措置には、以下の1~4の条件があります。
1. 住居及び行動範囲の制限
2. 呼出しに対する出頭の義務
3. 逃亡及び証拠の隠滅を防止するために必要と認める条件(=保証金の納付)
4. 本人が定期的に、監査措置条件の遵守状況等を報告する
また、これらの条件を守らせるために、監理人を選任しなければなりません。
そして、監理人は、以下の5~8についての責務があります。
5. 本人の生活状況の把握及び指導、監督
6. 出頭の確保その他監査条件の遵守の確保
7. 住居の維持に係る支援、必要な情報の提供、助言、援助に努める
8. 本人が監査措置の条件等に違反する時や、許可なく不法就労などを行っていると知った時は、届け出なければならない。
誰が監理人として入管から認められるのかなど、まだ詳細は決まっていません。分かり次第、記載しようと思います。(配偶者でも可能か?? 私でもできるのか??など)
監査措置と仮放免との関係について
監査措置は、収容令書に代わる措置として行われるものです。
従って、収容令書又は退去強制令書が発布されてから、収容を一時的に解除したい場合は、従来通り仮放免許可申請により行います。
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(改正案) 違反調査中の出国命令について(新設)
※現在まだ、法案の審議中です。
現行法では、出国命令は、自主出頭した場合だけでしたが、改正案では以下の通り変更されます。
初回の違反調査結果の通知前(=入国審査官の「退去強制対象者に該当する通知」を受ける前)に「すみやかに本国に帰ります!絶対、約束します!」と伝えると、出国命令制度を使って帰国することができます。
この場合、上陸拒否期間を1年とすることができます。(但し、短期滞在ビザでの来日を除く)
日本人や永住者と結婚することができない場合や、就労系のビザで1年後に再来日したいと思っている場合に、この制度を使って帰国するのを検討する余地はあります。
まとめ
東京入管の7階に行き、狭い小部屋が並ぶ一室で、鉄枠に囲まれ穴の開いたガラス越しに本人に会うのは、行政書士でもやはり胸に来るものがあります。
それが、自分の大切な人だったら、なおさらですね。
法改正され、彼が収容されなくてもいい監査措置として、認められるといいですね。
ただし・・・・
これでは、退去強制令書が出るのを阻止できません。つまり、いずれ来る「日本から出ていきなさい!」という命令を、止める手段ではありません。
彼が日本に在留するためには、どうしても「在留特別許可」を行うことが必要です。
在留特別許可を行う は、こちら