不法残留(オーバーステイ)と出国命令、在留特別許可について
※不法残留(オーバーステイ)時の対応について説明します。不法入国、不法上陸では出国命令が使えませんので、ご注意ください。
→不法入国、不法上陸についてはこちら
彼が不法残留(オーバーステイ)だと分かったとき、あなたと彼がどうすればいいか説明します。
- まだ、警察や入管職員等に見つかっていない場合
→自ら入管に出頭し、出国命令により帰国する
→自ら入管に出頭し、在留特別許可を行う - 既に警察か入管に見つかってしまって、収容されている場合
→(改正後)違反調査の一回目の結果が出る前に、速やかに帰国する
→在留特別許可を行う、または、帰国に上陸特別許可を行う
詳細は、不法滞在で警察や入管に捕まった をご参照下さい。
まだ、警察や入管職員等に見つかっていない場合
たぶん、彼は自分が捕まることを怯えながら、生活していることと思います。
まずは婚姻を成立させてください。(結婚の手続きについてはこちら)
絶対に偽装婚ではダメです。必ず同居すること。
何度も繰り返しますが、愛のある相手でないと(国際結婚の場合は特に)
同居をするのは苦痛が伴います。
なお婚姻届を提出した市役所が、不法滞在を通報することはありません。
「婚姻手続きが終わったら、入管に出頭してくださいね」と市役所の人に促されることはありますが、不法残留でも結婚すること自体は合法ですので、安心して大丈夫です。
さて、結婚が成立した後、選択肢は二つあります。
- 自ら出入国在留管理局に行き、出国命令によりいったん帰国し、
1年後に在留資格認定証明書交付申請を行う。 - 自ら出入国在留管理局に行き、在留特別許可を願い出る。
入管に出頭し、出国命令によって帰国する
出国命令での出国が出来る場合は、以下の5つ全てに該当している場合です。
- 出頭した + 速やかに出国する意思がある
(出頭とは、自らが入管に出向いて、不法滞在者ですと申告することです) - 不法残留以外の退去強制理由がない(不法入国、不法上陸者はできません)
- 重い罪に罰せられたことがない
- 初犯(1回目)である
- 速やかな出国が確実である
この場合、出頭した後で入管に収容されることはありません。
出頭後の流れについて(東京出入国在留管理局の場合)
- 出頭日に「出国命令で帰国します」と審査官に伝える。
(数時間の聴取がありますので、出頭日は早めに行きましょう) - 次回出頭日を指定される
- 指定された出頭日に入管に行き、違反調査を行う(複数回のこともあります)
- 違反調査が完了したら、審査官から「〇日~〇日の飛行機のチケットを購入し、持ってくるよう」伝えられる
- 最後の出頭日にチケットを見せて、そのあと、そのフライトで日本から出国する
出国命令でさっさと本国に帰りたいからと、勝手にチケットを買ってきて、入管職員から「まだ、(違反)調査が終わってないでしょ!!自分の都合では帰れないからね!!」と怒られている外国人がいたりします。まあ、見ていると様々です。
本国帰国と、その後の申請について
出国命令での帰国後、(日本への)上陸拒否期間は1年間です。つまり、1年間日本に(どのビザでも、ビザがなくても)入ることは出来ません。
しかし、通常の不法残留の上陸拒否期間が5年(複数回で10年)であることを考えると、この1年という上陸拒否期間は、非常に短いことが分かります。
帰国時より1年後以降に、在留資格認定証明書交付申請を行い、許可が出れば入国できます。(ただし、通常より難易度が上がりますので、丁寧な申請が必要です)
(現行法)入管に出頭し、在留特別許可をお願いする
婚姻が成立後に自ら出入国在留管理局に行き、不法残留(オーバーステイ)であることを伝えた上で、日本に滞在したまま、在留特別許可を願い出る方法です。
身分関係のある人が日本にいることを前提とするので「日本人の配偶者や実子」「永住者の配偶者や実子」などが行うことができます。(結婚が必要なのは、そのためです)
また、在宅案件になれば、収容されずに一緒に暮らすことが可能です。
(収容されてしまった場合は、仮放免許可を申請します)
とにかく、審査結果がでるまでに半年から数年かかること、在留特別許可が認められない場合には退去強制令書が発布され、収容や強制送還になることなどを考えると、非常に厳しい手段です。それでも、これしか夫婦として日本に一緒にいられないからと、あえてこの手段を取る方も、結構います。
詳細は 在留特別許可を行う をご覧ください。
(改正案)入管に出頭し、在留特別許可を「申請」する
※現在まだ、法案の審議中です。
婚姻が成立後に自ら出入国在留管理局に行き、不法残留(オーバーステイ)であることを伝えた上で、日本に滞在したまま、在留特別許可を申請します。
また、監査措置が決定されれば、違反調査の期間中に収容されずに済みますし、本人や家族の生計にどうしても必要ならば、申請すれば就労が認められる可能性があります。
監査措置については、監査措置の決定と、監査人の選任について をご参照ください。
在留特別許可については、在留特別許可を行う をご参照ください。
まとめ
もし、まだ彼が警察や入管に捕まっていないならば、出来るだけ「自主出頭」(自分で入管に行き、オーバーステイしていることを伝えること)してほしいと思います。
出国命令で帰国するにせよ、在留特別許可を申請するにせよ、自らが罪を認め出頭した事実は、必ず積極的要素として考慮されるからです。
彼のことを好きならば、将来もずっと一緒にいたいならば、今辛い選択肢を選ぶことを、躊躇わないでほしいと、強く思います。